大澤さんは、鋳型づくりの最適な材料の配合加減を長年にわたり研究し続けました。
鋳型の型は、土で作ります。
原料になる土は、川砂や山土などの生砂と、どろどろに融かした粘土、土の粒子を繊維でくっつける役割を果たす和紙ーと大きく3つの成分を基本としています。
生砂は高温で焼くと膨張し、逆に粘土は収縮します。
この膨張や収縮は900度を超えると一気に進んでしまうので、その手前の800度くらいが、ちょうどいい鋳型の燃焼温度です。
鋳型を焼くうちに和紙は燃えてなくなり、金属から出るガスが抜け出る、程よい空間を作ります。
この土と粘土と和紙の配合をどう調整するかを、何度も試作を繰り返した後、安定した配合の土ができ、焼きあがった後に、ぱっくりと2つに割れる鋳型を作り上げることに成功したのです。
出来上がった鋳物に細かい鋳型の土が残ってしまうと、取り除くのに苦労します。
きれいに割れて取り除けるようになり仕上げがしやすく、ピンホールと呼ばれる小さな穴も残らないようになりました。
鋳型は、土の成分とともに、焼き方も重要です。
こちらも経験と職人の勘に頼るしかありません。
800度から900度の間で調整しながら、十時間ほどかけてゆっくりろ焼き、最後は蒸して均一に焼き上げます。
当時は仕事場に茣蓙を敷いて、絶えず火の具合を見ながら夜通し焼いたものです。油断して寝過すと、薪がきれて鋳型が冷めてしまいます。慌てて温度を上げようとすると、鋳型にひびが入ったりして、うまく出来上がりません。
焼きあがった鋳型は400度までに冷まし、そこに1100度に融かした金属を流し込みます。
後はじわっと明日の朝まで冷ますのです。
そうした、土の配合から焼き方、冷まし方の温度まで、微妙な調整が続きます。
焼型鋳造の鋳物は、じわっと冷ますために金属の粒子がしまったきめの細かい、しっかりとした生地ができます。
彫金や象嵌、着色に優れているのが魅力です。
ただ、焼き方が足りないと、ガスがたまって鋳物に穴が開いてしまいます。焼き過ぎると「いばり」と呼ばれる金属の破片が出て、きれいに仕上がりません。やや強めに焼いて、後の処理でごまかすのが安全なやり方ですが、そういうやり方は性に合いません。
いばりを出さずに、ちょうどよいきれいな鋳物を作ることを追求し続けました。今はごまかせても、十年、二十年たつと、やはり良いものははっきりとわかるもの。
鋳物の腕はごまかせないのです。
2010年10月大澤光民さんのお話より Makkiko
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